給湯器による一酸化炭素中毒
一酸化炭素中毒とは
一酸化炭素中毒とは、空気中の一酸化炭素を吸い込むことで起こる症状のことです。
一酸化炭素は密閉された空間での火災や、長時間換気せずに灯油ストーブを使うことで発生します。
また、室内用ガス給湯器が不完全燃焼することでも一酸化炭素が発生します。
一酸化炭素中毒の特徴
一酸化炭素中毒は、無色無臭の一酸化炭素(CO)を吸入することで起こる中毒です。初期症状が風邪に似ているため、気づくのが遅れやすく、重症化すると命に関わる危険性があります。
症状
中毒の症状は、空気中の一酸化炭素濃度や吸入時間によって変わります。
- 初期症状: 軽症の場合、頭痛、めまい、吐き気、疲労感など。これらの症状は、風邪や二日酔いと間違われやすいため注意が必要です。
- 進行した症状: 中毒が進行すると、集中力や判断力の低下、意識の混濁、けいれん、胸痛、息切れなどが現れます。
- 重症の症状: さらに悪化すると、意識を失い昏睡状態に陥り、最終的には死に至ることもあります。特に高濃度の一酸化炭素を短時間で吸入した場合、症状を自覚する間もなく意識を失うことがあります。
事故事例
給湯器が原因で起こる一酸化炭素中毒の事故事例は、主に不完全燃焼と換気不足が複合的に引き起こすケースが多いです。以下にいくつかの具体的な事例とその原因を解説します。
- 古い小型湯沸かし器による事故: 1975年製の小型湯沸かし器を長期間使用せず、その後再使用した際に一酸化炭素中毒で死亡事故が発生しました。これは、古い機器には不完全燃焼を防ぐための安全装置がついていないことが原因でした。換気扇を使わずに機器を長時間使用したため、発生した一酸化炭素が室内に充満し、事故につながったとみられています。
- 屋外設置型給湯器の事故: 屋外に設置された給湯器が不完全燃焼を起こし、発生した一酸化炭素が何らかの要因で浴室内に流入し、死亡事故が発生したケースがあります。給湯器の排気口が隣家や壁に近すぎたり、雪などで塞がれたりすることで排気が妨げられ、不完全燃焼につながる可能性があります。
- 排気筒の詰まりによる事故: 給湯器の排気筒が鳥の巣などで塞がれた結果、不完全燃焼を起こし、一酸化炭素中毒で死亡事故が発生した事例があります。排気不良が原因で不完全燃焼が起こり、発生した一酸化炭素が室内に逆流してしまったと考えられます。
- 不適切な改造による事故: メーカーがリコールを呼びかけていた製品を、業者が不正に改造し安全装置を解除したため、不完全燃焼が起きても停止せずに稼働し続け、複数の死亡事故につながった事例も過去に発生しています。
なぜ給湯器で一酸化炭素中毒が起きるのか
給湯器による一酸化炭素中毒は、酸素が不足した状態で燃焼する不完全燃焼が主な原因です。通常、ガス機器は酸素を十分に取り込み、完全に燃焼することで二酸化炭素と水蒸気を生成します。しかし、何らかの原因で酸素が不足すると、無色・無臭の有毒な気体である一酸化炭素が発生してしまいます。
主な原因としては以下の点が挙げられます。
- 換気不足: 室内設置型の給湯器を使用する際に、換気扇を回さなかったり窓を閉め切ったりすることで、室内の酸素が不足します。
- 機器の不具合や経年劣化: 給排気口の詰まり(ほこり、すす、鳥の巣など)、内部の錆や汚れ、経年劣化による不具合などが不完全燃焼の原因となります。
- 不適切な設置: 屋外設置型であっても、給排気口が塞がれるような場所に設置されていると、排気が滞り不完全燃焼を起こすことがあります。
予防策と応急処置
予防策
- 定期的な換気: ガス機器使用中は必ず換気扇を回したり、窓を開けたりして、新鮮な空気を取り入れましょう。
- 機器の定期点検: 給湯器は経年劣化や不具合が起こるため、定期的に点検を行い、異常がないか確認することが重要です。特に製造から10年以上経過した機器は、メーカーの点検を受けるか、交換を検討しましょう。
- 給排気口の確認: 給湯器の給排気口が塞がれていないか、定期的に確認しましょう。特に屋外設置型の場合、雪や落ち葉、鳥の巣などがないか注意が必要です。
応急処置
一酸化炭素中毒の初期症状は、風邪に似ていて気づきにくいことがあります。頭痛、吐き気、めまいなどの症状が現れた場合は、速やかに以下の行動をとってください。
- 換気と機器の停止: すぐに窓を開けるなどして換気を行い、ガスの元栓を閉め、給湯器の電源を切ります。
- 新鮮な空気の場所へ移動: 症状のある人を一酸化炭素の発生源から離し、風通しの良い屋外などへ移動させます。
- 救急車を呼ぶ: 症状が改善しない場合や意識がない場合は、迷わず119番通報し、救急車の到着を待ちましょう。
一酸化炭素中毒は無色・無臭のため、知らない間に被害が拡大する恐れがあります。正しい知識を持ち、日頃から予防策を講じることが大切です。